EPA帰国者インタビュー(看護師候補者生①)

投稿者: | 2015年9月8日

 

早いものでインドネシアに来て10日程が経ちました。到着直後はゆったりと過ごしてましたが、今月に入ってからぼちぼちと活動が始まっています。

今回のインドネシア訪問の主な目的は、40ほどある日本語学習者がいる大学の再訪問とEPA帰国者から話を聞く事です。

ひとつめの目的はまだ2校なのでまだ先は長い状況です。そしてふたつめの目標に関しては今のところ3名のEPA帰国者とお会いできる予定です。

 

EPAによる来日時の状況

今回お会いした方は看護師候補者生として日本へ行き、看護師試験合格を目指しつつ仕事をしながら試験勉強と日本語学習をされていたそうです。お話を聞いたポイントを列挙してみますと、

<仕事について>
・日本での勤務先は名古屋市内の病院で、日本にいたのは約3年半程。
・インドネシアでも10年ほど看護師として仕事をしており、小児科の看護師長も務めていた。
・私はインドネシアでもキャリアがあるので、日本での仕事自体は簡単だと感じた。
・おしぼり準備、シーツ交換、汚れた服の交換、お手洗いに行くときの補助等々。
・帰国する3か月ほど前、看護師の手が空いておらず患者の身体を拭く事を申し出たら了解を得られた。一度やっているところを見せてもらい、その後は自分だけで担当させてもらった。
・患者さんの状況に応じて注意すべき点は、インドネシアでの経験からも理解して対応できる自信はあった。
・日本人スタッフはとても細かくて大変だと思ったが、今はインドネシアでもそのようにするようにしている。
・何かわからない事があった際は、まず病院の人に相談していた。
・患者同士を比べると日本人の方が優しいと思う。友達は日本人は細かいと言っていた。
・看護師として働いていたのでその経験を活かしたかったが、実際は看護助手の仕事が多かった。法律の関係でいろいろと日本は制約が多いのだと思う。
・インドネシアで身に着けたスキルを活かせるチャンスが少なかったのは残念。
・もし看護師試験に合格していたら、私はインドネシアでの経験を日本の看護師にシェアする事ができると思う。
・1年半程夜勤だけやっていた事もある。仕事は日中より負担が少ないが身に着く仕事もその分少ないのかもしれない。
・何度挨拶をしても返事をくれない患者さんもいるが、それでも返事をくれるまで挨拶をする。ただ聞こえなかった、気づかなかっただけかもしれない。相手をリスペクトする気持ちを忘れてはならない。
・私達の仕事の相手は物ではなくて人間。だからきちんと準備をしなければならない。良い準備をすれば良い結果が出るし、準備が悪ければ必ず悪い結果になる。試験は準備が悪かったので不合格だった(笑)

<試験について>
・1回目の試験では「必修問題:不合格」、「一般問題:不合格」。
・2回目の試験では「必要問題:合格」、「一般問題:不合格」合格点に30%足りず。
・3回目の試験では「必要問題:合格」、「一般問題:不合格」合格点に15%足りず。

<日本語学習について>
・とにかく漢字で苦手意識がある。1,500程の漢字を覚えるのは相当辛い。
・会話はとても好きなので聞く、話すは問題ない。文法は自信ないけれども・・・。
・先生は口を大きく開けて説明してくれるが、普通の日本人は口をあまり開けないので特に最初はわからなかった。
・日本で病院の指示で日本語学校に3か月ほど通った。ボランティアの先生や、病院でも研修をしてくれた。
・友達にN3は簡単だと言われたので、N2に挑戦してみたが不合格。その為合格した事はありません。
・日本語のテレビが大好きで8割くらいは理解できると思うが、ニュースはちょっと難しい。
・相撲が好きなのでテレビでも良く見ていた。
・電子辞書を使う時に画数を間違えると漢字を見つけられないので、勉強で苦労した。

<EPA制度について>
・定期的に候補者が集まる機会があり他の話を聞くと、もっと待遇が良い所もあれば逆に悪いところもあり、病院によっていろいろだと感じた。
・面接時に医師の数、看護師の数等々病院の情報がとても多い。
・日本語と英語の説明はあったがインドネシア語があったかは忘れてしまった。
・看護師試験に日本で合格して帰国しても、インドネシアで病院勤務をする人はほとんどいない。
・病院で働くとしても、日本人患者が多い病院で働く。その理由として給料が一番大きいと思う。
・どうして試験を英語で受ける事ができないのか。

<その他>
・日本にいるときにTOEICも受けてみたところ、スコアは870。
・1期生の友達の中で再度受験に挑戦した人がいる。
・帰国者は連絡先が変わってしまう事もあり、日本側も連絡が取れないというケースがあると聞いている。
・現在は医療関係の日系企業で3年程働いており、病院を回って看護師達へのトレーニング業務を行っている。
・インドネシアと日本での経験を活かすことができていると思う。
・日本人は謙遜しすぎる。マヒの方がリハビリで自分で動けるようになったのに謙遜する。もっと自信をもって言葉に出してほしい。
・いろいろ大変な事もあったが、日本に行く事を決めたのは自分だからその責任は自分にある事を忘れず生活していた。
・ムスリムだが飲み会も行くようにしていた。日本人の人達はアルコール以外の飲物、豚の入っていない食べ物を頼んで配慮してくれた。
・買い物とか遊びにも日本人と良く行った。

<今後について>
・日本がとても好きなので可能であればまた試験を受けたい。
・合格したら10年近い期間は日本で働きたいと考えている。
・仕事をしながらだと試験の準備と日本に行く事を考えるとなかなか難しい。
・職場の上司は私の想いを理解してくれて、試験を受ける事を認めてくれたが実際は行く事ができなかった。

 

それぞれの候補者生、帰国者の状況

今回初めてEPAの帰国者の方とお会いする事ができました。今回は看護師候補者生の方でしたが、介護福祉士候補者生の方にもお会いして行きたいと思います。

帰国後に日本での経験を活かせていることは良い事だと思いますし、再チャレンジのために再度日本に行きたい人がいる事も事例としてわかりました。

しかし、一方でEPAで日本に行く人が行けばその分インドネシアの看護分野の人材が減り損失が生じる可能性、帰国後はブランクとみなされ看護の世界に戻りにくい可能性がある等もわかりました。

本人自身が日本語能力を活かして違う分野で活躍できる事は、本人のキャリアが広がるのは良いと思いますが、結果としてインドネシアの看護人材が減少する事につながる可能性はあるかもしれません。

今回ご紹介した方は1期生です。制度開始から回を重ねるごとに修正や改善がなされ、少なくとも試験は合格しやすい方向になってきてはいるでしょう。それから受入施設側も候補者性を受け入れて試行錯誤する中で、ノウハウもたまってきている事と思います。

介護分野では技能実習生として受け入れる方向で話が進んでいます。今後EPA候補者と技能実習生が同じ職場で働く可能性があるという事です。専門性もキャリアも異なる彼らをどのような待遇で迎え入れ、どのように対応していくのか。EPA候補者受入れ施設に対する期待は大きいと思いますが、EPA枠拡大ではなく異なる制度により日本に滞在する技能実習生に対しては、今までのノウハウも通用しない可能性があります。

未決定事項も多く今後も動向に注目していくとともに、EPA来日者、帰国者、そして受入れ当事者からの話を引き続き聞いていきたいと思います。