中小企業の人事実務(新卒採用・母集団形成編)

投稿者: | 2014年3月10日

 

PROFILEにもあるように、私は以前卸売業を営む会社で人事を担当していました。そこでの仕事内容の詳細を書いていきたいと思いますが、その中で今回は「新卒採用」について取り上げたいと思います。ちなみに社労士とは関係ないこの「新卒採用」は非常に面白く感じましたしやりがいもありました。

私が会社に入って新卒採用を担当したのは2006年~2009年です。たまたまですが、リーマンショック前の比較的学生優位の売手市場とその後の買手市場の両方を経験した事になります。

いち企業の人事担当者の仕事内容の事例という位置づけで読んでもらえたらと思います。少しは採用担当初心者の方や就職活動中の学生の皆さんの役に立つかもしれません。

私は「総務人事部」という名の部署に所属し、私、女性社員、上司の3人で構成されていました。女性社員は補助的位置づけ、上司は他の部署上がりで役職を与える関係でその職に就いていたため、人事実務は未経験でこちらからいろいろと提案していく必要がありました。もっと仕事して欲しいと思う反面、自由度の高い仕事を自分で考えてできたので、今は逆に良かったと思っています。

 

自分が入社した時点での新卒採用の方法

【入社当時の採用の方法】
・母集団形成<インターネット求人媒体>
・選考ステップ<会社説明会(5月~6月)→選考→採用>
・合同説明会イベントへの参加(多くて年に2回ほど)

・採用人数を確保できなければ秋採用を実施(9月~10月頃)
という流れで実施しているという説明を受けて引き継ぎました。

実際に自分が担当するにあたり説明は受けたものの実務経験なく入社しているため、さてどうしたものか?という感じ・・・。会社の内容は、
・卸売業
・オーナー企業
・従業員100名程度
会社のことも良く理解しておく必要があるため、まず直接社長に「新卒採用」に対する要望をヒアリング。

<社長の要望>
①毎年新卒を採用しているがもっと男性が欲しい
②もっと質の高い学生を集められないか
③できるだけお金をかけない

優先度の高い要望はこのような内容でした。

 

その後自分がとった行動

上記社長の要望を聞いて考えた内容は以下の通りです。

①毎年新卒を採用しているがもっと男性が欲しい
そもそもこの要望が何故出るかというと、会社の業務が「食べ物に関わる仕事だったから」です。食べ物は身近な存在ですし、更に学生に何故か人気のある「商品企画」の仕事あるために女性のエントリー一般的に多いとのこと。引き継ぎ時の書類送付者のほぼ8割ほど女性でしたので納得。そして会社は商品を売ってなんぼの営業会社。営業=男性という考え方もありこのような意見が出たということです。

私が出した結論。おそらく会社の事業を考えると圧倒的に男性比を上げるのは難しいので、母集団をいかにいかに増やすか、それから男性を採用したいことを伝える場をつくる必要があると考えました。

②もっと質の高い学生を集められないか
何をもって質の高い学生を解釈するかにもよりますが、①にも書いたとおり会社としてはいかに物を売るかが大事なので、「営業向き」の人を集めろということだと理解しました、そしてそれは基本的に男性です。

私が勤務していた会社はBtoBビジネスです。つまりメーカーと小売店の橋渡し役のため消費者に名前を知られることは基本的にありません。知名度が低くさ更に中小企業のため、有名大学からのエントリー自体もとても多いとは言えませんでした。結論としては割合の問題であり①と同様母集団形成と男性応募者を増やせればその中に優秀な人材がいるだろうと考えました。

③できるだけお金をかけない
お金をかけずに欲しい人材を集めろ、というのはいかにも経営者らしい発言です(笑)。社長の意見ですからきちんと考えなければなりません。今までの採用活動では取り入れていない方法で、かつ、お金がかからない方法を考える必要がりました。
・大学のキャリアセンター(就職課)への訪問
・ハローワークの活用
・「就職ナビ」の変更(知名度の低いものから大手のものへ)
・採用代理店の利用

消費者が知らないということは学生はもちろん大学関係者も私たちの会社のことを知らないということです。従来も応募してきた学生には会社に対して良い印象を持ってもらえていたようなので、大学に電話してアポを取った上で訪問し自社の説明をさせていただくことにしました。ハローワークはもちろん無料です。効果のほどは未知数でしたが入口を増やすためにやってみることにしました。

いかにお金をかけないでと言われても採用を投資として考えるのであれば一定のお金をかけて欲しいと説得しました。それを何とか理解してもらい「知名度の低い就職ナビから大手就職ナビへ変更」。これだけでも数十万円UP。合同企業説明会も従来参加していたものより高額なのでこちらもUP。今までは恐らく採用の予算は年間50万円ほどだったでしょうか、それが私が担当するようになってからは少なくとも100万円はかかることになったと思います。それから採用のド素人だけではなくプロのアドバイスを参考にしつつ活動することにしました。これは大手就職ナビに変更するのとセットで取り入れた手法です。

ちなみに予算を増やしてもらっても採用人数は変わらず5名程度でした。ちなみに私がいた会社は「この予算で必ず採用をしなさい」というスタイルではなく、「都度稟議をあげて可否を判断する」といったやり方でした。これは会社によって違いがあると思います。

 

取り組み内容の結果

・大学のキャリアセンター(就職課)への訪問
在籍時に回った場所は約50ありました。OBのいるいないにかかわらずまずはアポの電話。電話してみると断るところはないんですね全て訪問させてくれました。訪問先では自社の歴史から仕事内容につて説明すると、概ね良い感触が得られました。その結果学内合同企業説明会に声をかけてもらったり、学校で男子学生に会社を紹介してもらったりすることができました。このことからまずは知ってもらうことがとても重要であると思いました。知らなければ応募したい仕事に応募することはできないわけですから。

また、リーマンショック前はこちらからコンタクトをとる感じでしたが、リーマンショック後は関係が築けている大学から逆に「学生をお願いします」、と言われることもありました。日本の新卒採用はその人がその時にできる能力ではなく、今後何ができるようになるかというポテンシャル採用です。そのため単純に生まれた時期、運で一生を左右するかもしれないレールに乗れるか乗れないかが決まってしまいます。この経験を通じて新卒採用のあり方に対して疑問を感じるようになりました。

・ハローワークの活用
これは正直全然ダメでした・・・。無料なのは良いのですが学生自体がハローワークを使った就職活動をしないこともあり、ハローワークでの説明かでも半日でブースに来たのは2名ほどとかそんな状況。やらないより良いのかと思いますが効果は期待薄です。

・「就職ナビ」の変更(知名度の低いものから大手のものへ)
これも会社を知ってもらうという意味で効果的でした。そもそものエントリー者数が桁違いに増えました。割合が増えたので男性の応募人数自体も増えました。その分資料の発送や会社説明会の運営、連絡、情報の管理等手間も増えましたが予算を増やしてもらって効果なし・・・では困りますし良かったと思います。合同説明会についても従来利用していた会社のものよりもブース来場者は増えました。

・採用代理店の利用
これは営業担当者に恵まれた側面もあるかと思いますが、大手ナビの導入に関することを含めたコンサルをしてもらえたので更に効果があったと思っています。時期に応じたアドバイスや、作成してもらった資料等いろいろ参考になりました。ちなみに使った業者はネオキャリアという会社で、勤めている方々は相当働いています・・・。メールの返事の時間とかみると、???って時がありましたのでいろいろ頼むのが客の立場でも申し訳ないくらいでした。その後どんどん従業員が増えているようですし事業は順調なように見受けられます。

日々いろいろな会社から営業電話がある中で、「会って話だけでも聞いてみようかな?」と思える人ってとても限られていました。そして実際にお会いした人の1人だった訳ですが、その後私が退職するまでずっとお付き合いいただき助かりました。さらにプライベートでもお付き合いがあり、できる人だなーと年下ですがいつも感心させられます。

 

その時々によって求められることは変化する

以上のような考え方で従来からのやり方と結果から社長のニーズを確認し、効果がありそうな方法へと変更しました。私が新卒採用をやっていた頃から5年ほど経過しています。その時にはまだfacebookはもちろん、twitterも知りませんでした。今ではソーシャルサービスを使っての採用活動も一般的になりつつあります。ですので今は違う方法も考える必要があるでしょう。

一方で就職ナビはまだありますし、大学と連携できればそれに越したことはないと思いますので、もし試していないようであればおすすめです。特に私がいたような知名度の低い会社ほど費用対効果が高い可能性があります。

結局この採用活動に限ったことではありませんが、今よりもより効果がある方法を考えそれを実行していくことが大事なのではないかと思います。