年金の受給資格期間短縮から思うこと

投稿者: | 2014年8月8日

 

年金機能強化法が平成24年8月10日に成立し同月22日に公布され、下記の内容が盛り込まれています。
・年金の受給資格期間(年金をもらえる要件)がこれまでの25年(300月)から10年(120月)に短縮されること。

今回の国民年金の加入期間の変更から、どのようなことが考えられるかについて書いていきたいと思います。

 

受給資格期間変更の内容

【現在の受給資格期間】
現在の国民年金の受給資格期間は25年となっていますので、単純に考えると20歳から払い続けた場合45歳までかかるということになります。

【変更後の受給資格期間】
今回受給資格期間は10年になりますので、20歳から加入していた場合は30歳で要件を満たすことになります。
※実際は様々なケースが想定されますが、シンプルなケースで記載しています。

現在の国民年金の老齢年金支給額(満額)は、平成26年度は月額64,400円(厚生労働省 平成26年度の年金額)となっています。今回の変更により、期間は5分2になりますので、単純に支給額をその割合で考えると月額25,760円となります。

変更後は約25,000円を国民年金から最低限の収入が得られ、厚生年金や厚生年金基金等からの支給額がこれに上乗せされることになります。自分が現在どれくらいの期間加入しているかは、ねんきん定期便を確認すればわかります(インターネットでの確認も可能です)。

何故受給資格期間の変更が行われることになったのか?について自分なりに考えると、
・年金不審により支払わない人が多い(期間を短縮することで納付率UPを図る)
最近人手不足と言われてはいますが、基本的に労働環境の悪い不人気業種なので人が集まりにくいという印象です。実際大手企業でのリストラは引続き行われていますし、給料が増えている人の割合は多くないでしょう。

そういうことを考えると、できれば将来の年金よりも今の生活にお金を充てたいという人も多く、結果として保険料未納に繋がっていることも考えられます。国民年金保険料の納付率は60%ほどとなっています(厚生労働省:国民年金保険料の納付率について(月次))。

長期的に景気が良くなり、将来賃金が上昇する見込みがないとなかなか改善は難しいように思います。

・正社員以外の働き方をする人が増え、社会保険に加入しないで働く人が増えた(強制徴収ができない割合が高まった)
女性や高齢者、外国人労働者の活用といったことがだいぶ取り上げられるようになってきました。日本人も従来の終身雇用から転職が一般的なケースになりつつありますし、いわゆる非正規雇用の割合も増加しています。

体力の弱い企業はできる限り社会保険料負担を減らしたいために、従業員に社会保険未加入で働いてもらう条件を提示する会社もあります。景気が良くならない限りこの方針はなかなか変わりませんし、今後もこのような方針をとる企業が増える可能性があります。そして非正規雇用の場合収入が低く、保険料を収める余裕が無い人も少なくないと思われます。

・財源に余裕ができる
単純に受給者が増えれば受給額が増えるわけですが、受給資格期間変更後は加入期間が短い人がいるので平均受給額が下がると考えられ、結果として財源に余裕ができると思われます。

しかし、今までは期間が短くて受給できなかった人は諦めるしかなかったケースが受給できることになる可能性もあり、受給者数自体は確実に増加しますので、運用が始まってみないとどの程度効果があるか不透明な気もします。

 

いち被保険者として思うこと

被保険者としてどうしていくべきなのか・・・、これは人それぞれの働き方に対する価値観や、将来に対する備えに応じて考えれば良いと思います。

今回の要件変更のメリットとして考えられるのは、加入期間が短縮されたことにより「働き方を縛られにくくなる」ことが考えられます。つまり、「将来を見据えて柔軟な働き方を選択しやすくなった」と思います。今まで通りに働く人にとっては特に何かが変わるわけではありません。その意味でのデメリットはないでしょう。

どういうことかというと、今までは年金を毎月支払っていても25年に1ヶ月でも足りなければ受給額は0円。変更後はこの期間が10年になるわけですから、このルールに縛られる期間が相当短くなります。

おそらく多くの人が途中まで払った以上、自分ももらえるまで保険料を納めないと損だと考えると思います。その結果、なかなか転職とか新しいチャレンジをすることで保険料を支払えなくなる状況になることを考え、行動を起こすことを躊躇してしまいます。

受給資格期間変更前 ⇒ 20歳から納め始めたら25年経過後は45歳。
受給資格期間変更後 ⇒ 20歳から納め始めたら10年経過後は30歳。

新しいチャレンジをするにしても、どちらがやりやすいかは明らかでしょう。受給額は納付期間が短い分当然少ないですが将来もらえる最低収入を確保し計算した上で、起業なり留学なりまったく新しいチャレンジがしやすくなると思います。30歳位であれば、仕事の経験から自分で何か始めるためのスキルを持っている人も多いのではないでしょうか。

現在でも老後のプランは年金をベースにあとはどう上積みするか?という観点で考えます。そのベース額が低くなるので、足りない必要額をどうまかなっていくのかという考え方です。根本的な何かが変わったわけではなく、基本的には金額の問題です。

現状上記の例の場合、30歳で自営業になったとしても45歳まで国民年金を支払うキャッシュが必要ですが、変更後は10年経過後はそのキャッシュを心配する必要はなく、逆に自分への投資に使う事が可能ということです。

自分への投資の結果、事業が成功するかもしれませんし、老後も自力で収入を得る能力や手段を身につけることができる可能性も十分あるでしょう。

 

今回の要件変更も過渡的なもの

今回のようにいつ、どのような条件で受給できるのか、ということは法律によって定められます。そして今回の内容も将来変わらないというわけではなく変更される可能性は高いです。

受給資格期間だけではなく社会保険の加入対象者を拡大することも検討されているので、同じ働き方をしていても加入しなければならなくなる可能性もあります。同じ内容、同じ時間仕事をしても手取りが1万円、2万円少なくなる・・・ということも起こりえます。保険料を収める労働者が減少し、年金を受給する人達が増える以上、今後支給開始年齢の引き上げや支給額の切り下げ、対象者の拡大は十分に考えられることです。

ベストの選択はその時自分にはわからないものだと思いますが、自分なりにどうすべきかを考え、後々後悔せず納得できる選択をしていくしかありません。

現在、平均36万円程度の収入だった場合の、国民年金と厚生年金を合わせた夫婦の受給額は月額226,925円だそうです(厚生労働省 平成26年度の年金額)。

この金額でも余裕があるわけではないと思いますので、私達世代はプラスアルファの将来の収入源を確保していく必要があると考えられます。そのためにも、将来の自分の理想の生活を考えて老後の準備をしていく必要があるのではないでしょうか。